連携機関インタビュー②

林道倫精神科神経科病院インタビュー

インタビュイー:林英樹院長・杉山はるか地域医療部長

        大西展代さん(精神保健福祉士)・佐々木秋音さん(精神保健福祉士)

インタビュアー:八杉基史(代表取締役)・大東真弓(管理者)・星昌子(顧問)

※向かって左側が林院長、右側が杉山さん

※中央が大西さん、向かって右側が佐々木さん

―今後の岡山市の地域精神科医療について―

八杉:

―岡山県東部の精神科病院が不在地域のフォローをどのようにしていくかは岡山県が抱える大きな地域課題です。タウンサークルでは、物的・人的資源が不足している地域でも、身近なところで医療サービスが受けられる仕組みを作らなければならないと考えています。看護師による訪問看護は増えましたが、今後は精神科医による往診や訪問診療も期待しています。

林:

その通りです。林病院としても若手の医師を中心にアウトリーチを推進していこうと考えています。声を掛けていただき、できる限りお応えできるように頑張っていきたいと思います。訪問看護については当院の「みさお山訪問看護ステーション」が訪問していない地域をタウンサークルに依頼させていただくことから始まりました。

―タウンサークルを利用する理由について教えていただけますか?

林:

お願いしたらまず受けて下さるところです。我々は、状態が悪い時から時間をかけて関係づくりをしていき、信頼関係を築いていきます。ある程度落ち着いて地域に出られた方との関係づくりもかなり大変かと思いますが、タウンサークルさんは関係づくりにとても丁寧に取り組んで下さっています。そこが信頼できるところだと思います。

杉山:

利用者の方にタウンサークルの感想を聞いてみました。

「最初は言葉で自分のことを語ることが出来ませんでした。でも、思いを言葉にできるようになりました。訪問看護やグループホームの世話人が家に来てくれて自分のダメなところなど言ってくれるし、よくなるための提案もしてくれます。そういった意味でも何でも話せる安心感があります。週1回の訪問看護の時には色々な話をする中で、今では自傷行為がすっかり無くなりました。時に死にたい気持ちは出て来るけれども、行動に移すことは無くなりました。言葉に出せるようになったからだと思います。自分の世界が広がってきている感じがします。」とのことでした。

もちろん訪問看護とデイケアとグループホームがすべて影響しあい連携しあっての結果だと思います。だからこそ連携がとても取りやすくそれもタイムリーに相談することが出来るのもタウンサークルの強みだと思います。

状態が増悪しているケースなど緊密に連携が取れ、対応を相談し統一することが出来るため大変助かります。グループホームのスタッフだけでは支援の難しいケースでも、チームで支えていると実感し安心できます。

林:

タウンサークルの利用継続率はかなり高く、スキルの高さを感じています。

八杉:

「まごころ」を大切にしています。「自分の家族だったらどうするのか?」という問いかけを常に行い、家族にかかわるのと同じような思い入れを持って支援するように心掛けています。

―訪問看護へ期待することがあれば教えていただきたいです。

林:

治療チームとして対等な立場ですので、ケア会議では遠慮なく、忌憚のない意見を発信して欲しいです。もっとズバズバと意見を言っていただきたいと思います。院内で働く看護師と比べ地域で働く看護師の方がやりがいを持ちやすいのではないかと感じています。

八杉:

入院が本当に必要な時にすぐに入院させて頂けなかったりすると御家族や地域の支援者は本当に困ってしまいます。その辺りでの信頼関係も重要だと思います。

訪問看護では看護師がメインです。多様な専門職が地域でチームを組めるようになりたいと思っています。実際にやってみなければ分からない事が沢山ありますので多くの人に訪問を経験して頂きたいと思っています。

林:

 ご本人や家族がピンチの時に頼りになる精神科救急病院でありたいです。

―ソーシャルワーカーとしてタウンサークルに依頼する理由をお聞かせください。

大西:

タウンサークルを紹介したケースは患者さんから断られることがありません。それだけ患者さんから信頼してもらえる関りをされているという事だと思います。その秘訣を教えていただきたいぐらいです。「この人に来てもらって本当に良かった。」という感覚がないと毎週受け入れてはもらえないと思います。

大東:

入院中は看護師が交代しながら患者さんに24時間関わります。また、申し送りでも各職種も含めて多くの情報を得た上で密に関わることが出来る環境です。それに比較し訪問看護は週1~3回程度です。タウンサークルへ入職した当時は「よく若い人が関係を作って相談事を聞けているなあ。」「すごいことだなあ。」と思っていました。

今は、それぞれのスタッフの強みを生かした関りや工夫を振り返り、訪問看護としてのやりがいを見出していけるようにと考えています。関係の築き方は人それぞれだと思います。スタッフ自らのストレングスを活かしアイディアを出しながら関係性を築いていくことが大切だと思います。

佐々木:

利用するときに重視しているのは関りの質です。クオリティーの高さでタウンサークルを信頼しています。精神科の資源が少ないところにも断らず行ってくださる点でも助かっています。困難な状況にある人ほどしっかり受けて下さるのも心強いです。お願いをしてからレスポンスまでが非常に速いのも助かっています。今後も多くのケースを一緒に支えていきたいと思っています。

編集後記

 今回は2部に分けてインタビューをさせて頂きました。最初に林院長と杉山部長のお二人にお話を伺いました。お忙しい中、お二人ともインタビューに先駆けて利用者さんの声を聞いてくださった上で、カルテや訪問看護報告書に再度目を通してきてくださるなど、誠実なお人柄に感銘を受けました。

公益財団法人林精神医学研究所は、「その人らしく生きられるように共に支えあいます」の理念を掲げ、医療の枠にとらわれず、地域での支援を充実させるべくいろいろな支援体制を構築されています。病棟には多くの地域サービス事業所が出入され、地域移行支援事業を積極的に行っている相談支援事業所や、リカバリーやリワークに取り組むデイケアなど患者様のニーズに合わせて柔軟に活動を展開されているように感じました。精神科救急医療から地域医療・福祉までバランスよく幅広い活動を展開されている林病院といった印象です。また、後半お話を伺った精神保健福祉士の方々が生き生きと目を輝かせながらお話をされている様子にとても力強さを感じました。

林病院の皆さんお忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。

ホームページ:林道倫精神科神経科病院 (hayashi-dorin.or.jp)